仕掛人エイドリアン・シャーウッドで、これは彼のON-Uサウンドの第一弾アルバム。「第一弾にしてコレかよ」という感じのやりたい放題の無茶苦茶なニューウェイブ・ダブ・アルバムになってます。ザ・スリッツのアリ・アップが子供のように歌う1曲目の「Fade Away」のスカスカ具合と、どんよりした暗さは、まさしくパンク精神でレゲエの自由さをかき乱した象徴的な1曲。そして2〜3曲と進むごとに、さらに怒濤のようにサウンドがダークに変色していきます。


アリの母親はドイツの音楽プロモーターで、自宅にいろいろなパンクのミュージシャンが遊びにきていたらしいのですが、そこでみんなが聴いていたのがレゲエであったようです。実はパンクというのはライブ演奏も会場から拒否され、さらにまだイギリスでは誰も自分たちのパンクレコードを出せていないという状態だったから、既存のレゲエのレコードしか聴くべき面白い音楽がなかった、というのが実情だそうです。後にアリの母親がジョン・ライドンと結婚したのは有名な話です。


セカンドはアリの歌の場面も多く、サウンドも幾分ポップになってます。サードは様々なゲストがボーカルをとっていますが、完成度とともに衝撃度は落ちています。このファーストは制作期間が一週間らしく、いい意味で「いい加減」なダラダラ感が逆にダブならではのルーズな快感になって、何度聴いても初めて聴いたときのように新鮮な気持ちで音に接することができます。なんと2011年に27年ぶりの新作「Love Forever」を発表。残念ながらそれがアリの遺作になってしまいました。