裏ジャケットを見るとメンバー4人の名前があり、シリコン・ティーンズというバンド名通り、10代のメンバーばかりで結成されたとか、それっぽい写真も見たような記憶もあるんですが、ぜ〜んぶミュート・レーベルの仕掛人ダニエル・ミラーのでっち上げ。ミュートというレーベルの存在はDepeche ModeやYazooで知りましたが、実はこのレーベル第一弾シングルでもあるThe Normalの「Worm eatherette」('78)がテクノの名曲10選にも入れたいほど大好きな曲で、そこからミラーのファンに。


というわけで、彼の覆面プロジェクトであるこのアルバムは、収録曲のほとんどが懐かしのオールディーズというかロックンロールのカバー曲で構成されています。テクノ・ポップとロックンロールの組み合わせは実は意外に相性がよく、テレックスの「ロック・アラウンド・ザ・クロック」などもありました。しかしシンプルでありながらグルーヴ感もちゃんとあるテレックスに比べ、このシリコン・ティーンズは、いかにも素人っぽいローファイ感。そして、それがまた魅力でもあります。


全曲がヘボヘボのピコピコサウンド炸裂。今時高校生でももうちょっとマシな打ち込みできるぞ、と脱力することまちがいないしです。シーケンサーを使ってるのかもわからないくらいの手弾き感が満載。こういうズレまくるシンセフレーズも、録音の荒さが粗野な魅力になっていた初期のロックンロールの魅力をテクノという手法でなぞったともいえます。とは考え過ぎで、単にミラーに楽器経験がないというだけかも。ともあれ文句なしに楽しいテクノ・ポップ・パーティ・アルバム。