80年代後半から90年代初頭にかけて、アシッド・ジャズ系の新しいグループを収録したオムニバスに混じって、その時代に「再発見」された70年代のソウル/ジャズ系のレア音源が、ある意味どさくさ紛れに入っているケースが当時よくありました。今回紹介するアリス・クラークも自分の世代には「トータリー・ワイアード」のシリーズに収録された「Don't You Care」という曲で知ったという人も多いはず。


本来ジャズのレーベルであったメインストリームから何故このようなソウル系の女性ボーカルのアルバムがリリースされたのかは謎ですが、このアルバムの前年にアレサ・フランクリンフィルモアのライブやダニー・ハサウェイのライブが発売されたことを考えると、何となくこのアルバムもその影響を感じさせずにはいられません。アレサからクセを抜いたようなボーカル。ホーン・セクションを含め、かなりライブ感を意識したアレンジ。スタジオ一発録音っぽい独特の空気感もジャズのレーベルならではでしょうか。


嬉しいことにダニーのライブで演奏された「Hey Girl」がラストに入ってます。テンポを上げたこちらのヴァージョンもなかなか。フリー・ソウルのコンピ収録の人気曲「Never Did I Stop Loving You」も、そこに収録される前から当時のロンドン発の怪しいブード盤にも収録されていたダンサブルなナンバー。そして何と言ってもドラムのブレイク入りの「Don't You Care」がやはりハイライト。彼女のアルバムは結局これ1枚というのも、どこか愛着を抱かせるひとつの要因になっているようですね。