初めてエスパーズというグループを耳にした時、それがアメリカのフィラデルフィア出身のバンドだとは到底思えないほどの英国フォークっぷりに驚いたものです。ただ、その英国の音楽が米国への憧れから少々の誤解も含めて成り立っていたロックの歴史を考えると、逆にロックから英国フォーク〜トラッドへと流れていった一連のバンドに憧れを抱いている米国のアーティスト達がいてもおかしくはないはずです。ルーツを辿ればディランなどの米国フォーク音楽も、もともと英国やアイルランドの音楽の影響なしには考えられないものです。


英国フォークが持っていたダークな世界観を形容するのに「深い森」と表現するのは日本だけの現象なのでしょうか。これが実に言葉の妙といいますか。実際、この手のフォークのジャケットの登場する写真の「木」や「森」の率たるや半端なく、しかも、それがまたマニアには購買意欲そそられるポイントだったりするから悩みもの。シンプルだけど飽きがこない、というのは、まさに我々が森を見つめるときに感じる気持ちそのものと非常にリンクしているのです。


エスパーズの歌姫メグ・ベアードの初ソロ「ディア・コンパニオン」(2007)も木漏れ日ジャケと本人の後ろ姿というジャケからして名盤の香りが漂っていたものですが、このサード・アルバムも裏ジャケのダークな森の写真だけで名盤確定です。ついついアナログ盤で購入しました。幽玄な生ギターの弾き語りに絡むトロトロとしたエレキ・ギターが部屋の温度を確実に5度は下げてくれます。震えるような小さな歌声は、まさにヴァシュティ・バニヤンの流れを汲む、とても魅力的なものです。