一般的には笠井紀美子というとジャズ・シンガーというイメージなのかもしれませんが、結構ポップスやソウルっぽいアルバムも多いんですよね。あえて言うなら、コンテンポラリー・フュージョン。まぁ、なんか響きは安っぽいですが、海外でいうとナンシー・ウィルソンとか、そういうポジションに近いのかなぁ。単純にジャズやソウル・シンガーと呼ぶには歌い方に迫力がないような気がしますが、何しろ歌の表情というか、本人の雰囲気が抜群なのです。ほろ酔い気分のバーのママさんが「ちょっとアタシも歌ってみようかしら」という感じの軽さといいますか。

この「バタフライ」('78)はハービー・ハンコックをバックにした割とソウルフルな一枚。録音は東京のCBSソニー・スタジオなので、日本で企画制作されたアルバムなのでしょう。輸入盤で売ってるのも観たことないし。もしかしたら海外のハンコック好きなジャズ・ファンには結構レア盤なのかもしれませんね。日本でもクラブ系で一時期人気盤で、割りと高額で取り引きされていたのですが、今はCD化されてアナログも安くなったのかな。ボクは大昔に300円で買いましたが(笑)

なにしろハンコックがヘッド・ハンターズでノリノリのファンク・ミュージックを作っていた頃なので、初めは軽いセッション風に録音する予定だったのが、ついつい熱くなってしまったライブ盤のような感じのサウンドなのです。場合によってはハンコック本人のソロ・アルバムで納められているヴァージョンより手馴れた演奏だったりするのですから。アープ・ストリングスのシンセサイザーの音が、なんともクロス・オーバー・イレブンな雰囲気でいいですね〜。さすがにヴォコーダーやディスコっぽいリズムは時代を感じさせますが・・・。ただ企画盤にありがちな安っぽさはありません。ラストのスティービー・ワンダーの「アズ」のカバーにはチョット感激かも。

ジャケット写真はちょっと怖いですが、歌詞カードに載ってるハンコックとの2ショット写真の笠井さんは、まるで子猫のように可愛らしいです。