マーク・フライ(Mark Fry)というSSWによる唯一のアルバム('72)。雰囲気はドノヴァンに近い弾き語りながら、どこか焦点の定まらないぼやけた感じのアシッド・フォーク。おそらくアクビが出るほど退屈という人もいれば、夢見るような木漏れ日フォークっぷりにウットリという人と評価が真っ二つにわかれそう。


スナフキンみたいな本人のジャケットの横にいる少女は、彼の子供ではなくて妹らしいです。ムーミン村のように架空の田舎でひっそりレコーディングされたような4トラック録音の音質の悪さが、古く色褪せた子供の頃の甘い記憶を呼び起こさせくれるようで、聴くたびに胸の奥に熱いものがこみ上げてきます。大好き。


何度も繰り返しリピートされるタイトル曲が聴く者の時間軸を狂わせ、気がつくと夢見心地になって、いつのまにかアルバムが終わってしまうという不思議なこの感覚。本人は現在、フランスで画家としてひっそり暮らしているみたいですが、ヴァシュティ・バニヤンのように「35年ぶりにシンガーとして復活」ってのはどう!?