温もりに溢れたヒューマンなサウンド。でも、どこまでも残酷で情け容赦ない歌詞。甘いメロディ。でも、ぶっきらぼうな歌い方。悲しいほどコミカルで、笑えるほどメロドラマ。相反する二つのベクトルで宙ぶらりんになっているようなランディ・ニューマンの歌は、だからこそ素晴らしい。


「オレたちゃ黒人たちをしいたげる」と陽気なカントリー風味で歌う1曲目の「レッドネック」からして毒気爆発。さらに、自分勝手なワガママ男が、切迫した愛を告白する「マリー」のようなバラードとか。後に映画の主題歌にもなった「ルイジアナ1927」も「セイル・アウェイ」と並ぶニューマンの名曲のひとつ。


ジャケのピンボケ写真のサングラス男は、ニューマンではなく、どこかの知らないアメリカ人だそう。この強気なのに小市民的な雰囲気の男こそ、実はニューマンの歌が表現する「アメリカ的情けなさ」を象徴しているみたい。ピアノ弾き語りのスタジオライブを丸ごと1枚収めた2002年のライノ盤(2CD)がオススメ。