冒頭、せせこましいピアノと、右へ左へと振れまくるムチャクチャなパンニングに「何じゃこりゃ」と呆れるものの、そこを通過すれば、そこはイタリアン・プログレッシヴ・ロックの至福の世界。B級だ、地味だという意見もありますが、ツイン・キーボードなのに音色がハデハデにならないストイックな雰囲気が個人的に好きだなぁ。


バンド名は「移動祝日」。長ったらしい原題タイトルも、日本では「旅行日記」というシンプルな邦題が。サウンド的には、ピアノのテクニシャンっぷりに最初は耳が奪われるものの、青臭い感じのボーカルも悪くない。基本的にはRCAレーベルのセッション・ミュージシャン集団だとか。裏ジャケのアーティスト写真が、いい感じ。


そんなある種の「1発屋」バンドですが(別に当たってもいないけど)、これほどドラマチックに曲の展開を考え続けるっていう根気と努力には恐れ入ります。70年代前半のイタリアン・ロックって、独特のバタ臭さが、だんだんハマるとクセになる魅力に変わるという妙に個性的なアルバムが本当に多いですね。