個人的にはYMOは初期から順番に聴いていったわけでもなく、おそらく80年代初頭に「ソリッド〜」と「増殖」と「BGM」をほぼ同時期に聴いたような記憶があります。だから「BGM」でショックを受けたという人たちは、おそらく「ライディーン」とか「テクノポリス」こそYMOと思っていた、歌謡曲ファンの人たちだったのではないでしょうか。自分は小学生ながらに、わりとロック指数が高かったので、「増殖」で垣間見せたYMOのロック指向から、この「BGM」というアルバムの流れはとても自然だと思ったのですが、どうでしょう。

このアルバムはYMOがファンに叩きつけた「踏み絵」とも言われています。ただボク個人の当時の感想はといえば、やっぱりYMOは「面白い」という感じでした。「暗い」とも言われるアルバムですが、「ラップ現象」の途中で出てくる「バカ、バカ・・・」としか聴こえない変なループとか、YMO本人達が登場しスネークマンショーみたいに語る「UT」とか、結構明るいと思うんですけどねぇ。たしかに毒はありますけど。

ジャケットの裏面には、彼らが使用した機材類とスタジオ代の莫大な請求書が印刷されていますが、こんなことをジョークにできてしまうのもYMOらしいところ。これがミスチルとか浜崎あゆみとかだったら、シャレにならないでしょ(笑)

音的には、少し前に発売された坂本龍一の「B−2UNIT」にも近いアヴァンギャルドでダークなテクノの匂いもありますが、同時に落ち着いたロマンチックな感じもあります。いかにもユキヒロらしい「バレエ」に続いて、教授らしい抜群のコードワークが嬉しい「音楽の計画」、そして細野晴臣らしいシンコペーションするリズムで、いち早くヒップホップのラップを取り上げた「ラップ現象」など、前半3曲でグイグイ聴かせてくれます。B面ではウルトラヴォックスに刺激されたベース・ラインが印象的な「キュー」、そして史上初のハードコア・テクノともいわれた「UT」と、YMOが当初狙っていた匿名性が上手い具合に発揮されたオリジナリティ溢れる「新しいテクノの方向性」を見事に提示してくれます。う〜ん、やっぱりカッコいいなぁ。

ラストの曲は、シンセサイザーがゆっくりと低音から高音まで駆け上がって行くのをゆっくりとプログラミングした、いわば音のドキュメントで、チル・アウト度数かなり高めです。全体的にダークで落ち着いた音色のトーンで統一されていて、いつ聴いても色褪せる事のない魅力が「BGM」にはあります。日本が世界に誇るべき恐ろしくプログレッシブな名盤でしょう。

●本日の更新「ショック太郎のマテリアル・ワールド」
http://www2.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=168425&log=20050412

風の谷のナウシカ」で有名な安田成美のアルバム。YMO絡みの盤でもあります。