フィンランドのイエス」とか「フィンランドの10cc」とか言われることが多いウィグワム。確かに曲の展開は異常に凝っていますが、大げさに盛り上がる部分はありません。どこか飄々としたユーモアセンスで淡々と次々に曲が短い展開で進んでいくこの感じは、むしろキャラヴァンやハットフィールド&ザ・ノースあたりのカンタベリー系のサウンドに通じるところがあります。74年のこの4thアルバムはプログレという観点からみれば彼らの最高傑作かもしれません。


シンセを使ってはいるものの、基本的にはエレピや生ピアノやオルガンといったオーソドックスな鍵盤楽器を軸に展開するバンドサウンド。そこにフルートやオーボエといった、さらに柔らかい管楽器が加わり、独特のジャジーなハーモニーに深い彩りを与えてくれます。ボーカルは相当複雑なメロディを歌っているにも関わらず、どこか人懐っこい朴訥とした雰囲気。ポップな曲調からジャズロック的なオルガンソロに一瞬傾れ込む展開もたまりません。


アルバム後半は、CDのインデックス表示を見ないとどこで曲が変わったのかわからないというお約束のメドレー展開。正直にいえば全盛期のイエスのようにテンションが高くスケールが大きい感じでもなければ、10ccのように魔法のようなスタジオワークが聴けるわけでもありません。しかしサウンド全体を包み込む霧がかかったようなミステリアスで繊細な雰囲気に「これがフィンランドなのか〜」と行った事もないくせに勝手に想像を膨らましてしまうのがユーロ〜プログレ好きならではの聴き方の一興ということで。